救急車の不正利用を考える
Twitterで、救急車の不正利用についての話が燃えていた。
本人は既にアカウントを消していたのでここには貼らないが、内容は
陣痛が来た妊婦には病院へ来てと言うが
旦那が仕事 知らんがな。
車がない 知らんがな。
タクシーは断られる 知らんがな。
救急車呼ぼうと思う なんでやねん。
高齢者の救急車不正利用と同じくらい陣痛妊婦の救急車不正利用は問題。
という感じのツイートだった。
あと、この発言者は産婦人科医のたまごらしい。知らんけど。
本人が言いたい事は恐らくこうだ
「妊娠期間中正常であり、正常な陣痛が来て、陣痛感覚が10分以上空いている状態で、本人は歩くことができるし住んでいる地域には陣痛タクシーがあり既に予約してある」
という状況で「救急車を呼ぶのは控えるべきだ」と言いたかったのだと思う(擁護ではなく、医療関係者として常識で考えた結果)
医療関係者として、この完璧な条件が揃っているなら、救急車を呼ばず陣痛タクシーを呼び、速やかに来院、医師か助産師の診察を受けるのが良いと思う。
ただ、その「正常な陣痛」を誰が判断するのか。
たまたま家族に医療関係者がいるならその人に診てもらうのもアリだと思うが、判断出来る人はそうそう居ない。医療関係者であっても、産婦人科以外の科で働いているなら、判断は正直怪しい。一般の人なら更に難しいし、今現在陣痛が来て痛みに耐えている妊婦自身に自分を診察させるなんて事はまあ無理だ。
そして、陣痛感覚が10分以上あるし大丈夫だろうと軽い気持ちのまま「まだ大丈夫だよ~笑」なんて言いながら祖父の運転する車で病院へ行ったら、30分後にすっぽーんと産まれてしまった事だってある。そう私だ。
「陣痛来てるけど朝ごはん食べてから行こうかな~」なんて思っていたので朝食食べていたら確実に間に合わなかった。
看護師である私ですら判断を誤るところだったのに、一般の人が「これは正常な陣痛だからこれからタクシーで行けば大丈夫だ」と判断するのは本当に難しいと思う(私が極端に陣痛に鈍感だったとか、産婦人科は学生時代研修でしただけだったとかあるので、個人的な感想ですけどね)
そして何より怖いのは、このように「妊婦の救急車の不正利用は問題だ」という話を知った妊婦さんが「迷惑をかけてしまうから、何があっても救急車は呼んではいけない」と思ってしまう事だ。
それによって誰か死んでしまうかもしれない。
救急車の不正利用について、故意に不正利用しない限り、それが不正利用だったかどうかは結果論だ。救急車を呼んだから助かった事だってある。
妊婦でも病人でも「救急車を呼ぶ」事を躊躇った事で取り返しのつかない事になってはならない。これは絶対だ。
しかし、救急車の不正利用が問題なのも大変分かる。
「今日は夜一人で心配だったから病院で過ごしたいから呼んだ」とか「歯が痛い」とか「日焼けが痛い」とか「蚊に刺された」とか「風邪の診察の待ち時間を短くしたい」とかいう理由で呼ぶ人が存在するからだ。しかも夜間に。当直医ブチギレ案件だ(とある医師が「せめて、せめて昼間に来てくれ頼む」と言っていたのを聞いたことがある)
この様な不正利用はしっかりと規制していくと同時に、本当に必要な人は躊躇わずに救急車を呼べるようにしていくべきだと思う。